きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 点検に使う道具を載せると、船は出発した。海側から水族館に立ち寄り、AIイルカたちを連れ出す。彼らは船に載せず、自走——自力で泳がせ、沖合へと向かう。
 アルトは「海だ! イルカが一緒に泳いでる!」とはしゃいでいたが、景色の変わらなさに飽きてしまい、到着までは本を読むというからそうさせた。スリープモードで寝てもいいよ、と言ったが、本のほうがいいらしい。

 一方のかおるは船酔いとの戦いだった。
 これまでは観光船しか乗ったことがなかった。漁船で沖に出るとこんなに揺れるのかと驚いた。おまけに海面との距離が近いので、落ちたらと思うと気が気でない。たとえ自分が落ちてもアルトだけは死守する、と心に誓った。

「大丈夫ですか?」
 雄介に聞かれ、かおるは首をふる。
「もうダメです……」
「はは、慣れないとつらいですよね」
「そうですね。……この仕事は長いんですか?」
 船酔いから意識をそらしたくて、かおるは聞いた。

「いえ、実は転職組でして。一年前、長年の夢がかなったんですよ」
 水族館で働くのは狭き門だ。夢をかなえた彼は、どことなく輝いて見えた。
 目的のポイントに着くと、船長は船のエンジンを止めた。

 遠くに伊豆半島が見え隠れするが、周囲には船も島もない。
 船長は「なにかあったら呼んで」と言って操縦室で音楽を聴き始めた。彼が検査につきあう必要はないからだ。

 かおるは船酔いを忘れるためにも仕事に集中した。
 二台のノートパソコンを用意し、一台は深海対応の水中ドローンに同期してイルカを自動追尾する設定にした。もう一台はAIイルカに同期させる。
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