きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「うーん……『個性』かもしれませんね」
「AIに個性なんてあるはずないじゃないですか」
 そう答える雄介の声には嘲りがあり、かおるは少し不快になった。

「ええ、厳密には個性ではありません」
 自律学習をするため、同じAIでも環境によって『個性』と言うべきものが発生することがある。
 このイルカの場合、芸を練習する回数や、担当する係員が偏ることによって、学習効果に差異が現れたのかもしれない。

「ま、ショーに影響がなきゃいいんですけどね」
「ショー程度でしたら問題ないと思います」
 言いながら、水中ドローンのモニターを見たときだった。一頭、イルカが多いように見える。先ほどの野生イルカが付いて来たようだ。体をくねらせ、踊るようにAIイルカと泳ぐ姿がなんとも言えず愛らしかった。

 イルカは順調に潜っていく。
 深度100、150、200と進み、とうとう限界深度に達した。
「深度300、OK」
 確認できたのち、イルカは事前に指令されていた通りに浮上を開始する。

 浮上の際も、サンゴは体ひとつぶん、遅かった。
 上がって来たイルカたちに破損確認のスキャンをかけるが、物理的な異常個所もプログラムの異常も確認できない。

「サンゴくん、機能的には問題ないのに……」
 かおるは首をかしげる。
「まったく!」
 雄介は船の中にあった手持ち式の網を手に取ると棒のほうでサンゴの頭を強く叩いた。

「なにするんですか!」
 とっさにアルトのいる端末のカメラを隠し、かおるは非難する。
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