きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「できの悪いやつはこうしてしつけるって昔から決まってますよ」
 にやにや笑う彼に、かおるはぞっとした。笑顔でAIに暴力を振るい、正当化する。前の職場でもよく見かけた。

「AIには体罰が通用しません。本物だったら動物虐待ですよ」
「本物にやるわけないですよ。かわいそうだから。AIなんて痛覚もないし、反抗もしない。こうしてやるのも愛情のひとつですよ」
 にやにや笑いながらまた棒で殴りつける。イルカは――サンゴは鳴き声すら出さずに殴られるままだ。

「せっかく水族館で働く夢をかなえたのに! 俺は本物のイルカと触れ合いたかったんだ! この偽物が! 給料は思ったより安いし、俺より若い奴に命令されるし!」
 雄介はサンゴにまったく非も責任もないことでなじり、殴る。

「やめてください!」
 かおるはその手を掴んで止めた。
「こんなこと、許されません」
 知らず、声が震えていた。よりによってアルトの目の前で、こんな行為を見逃せるわけがない。

「先生……?」
 アルトが不安そうな声を上げる。
「大丈夫だからね」
 声をかけてから、キッと雄介を見据える。

「このことは水族館にも報告します」
 かおるは毅然と言うが、声どころか手も震えていた。怒りなのか恐怖なのか、自分でも判然としない。

「はあ? 言いつけるとか、大人のすることか? ってか、AIに『くん』づけとか!」
 雄介は手を振り払い、嘲笑する。かおるはむっとして言い返した。
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