きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「ぼく、海もイルカも本物が見たい」
 やはり、納得はしてくれないようだ。

「……VRのほうがリアルだから、そっちにする?」
「本物が見たいの! 子ども扱いして!」
「大人でもホログラムやVRは利用するからね、子ども扱いじゃないよ」
 VR……仮想現実空間を利用してのエンタテイメントの提供はよく行われている。その対象は老若男女を問わない。

「先生、なんでも体験が大切って言ってたじゃん。お願い」
 アルトの言葉に、かおるは少し悩む。
 最近の北斗は、休日にアルトと一緒に出かけることもあるという。外出に肯定的なら、海に行くのも許可されるかもしれない。

「……北斗さんが良いって言ったらね」
 結局、かおるはそう答えた。責任を投げている気がしないでもないが、上司であり責任者でもある北斗に無断で勝手なことはできない。

「じゃあぼく、北斗に言って来る!」
 アルトは急いで画面から消え、かおるは苦笑した。
 最初、彼は独立した回線で存在していると教えられた。

 とはいえ緊急避難用に他の回線に繋げられるようにしてあったらしく、いつだったか彼はそれを勝手につなげて研究室を抜け出してしまった。
 存在を知られたせいか、北斗は徐々にアルトの研究所内での散歩を認め、今ではかおるか北斗が同行すれば研究所外への外出も認めている。——もっとも、アルトは外出用端末に入らないと出られないので、同行は物理的にも必須だ。
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