きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
 それよりアルトの水着を用意してあげたい。気分だけでも……いや、ふだんは体育で水泳もしているから水着はある。だけどお出かけ用があったほうがいい?
 ぐるぐると思考が巡り、ふと気が付く。

「点検に行くだけだから、海は見るだけじゃないかな」
 ほっとしながら言うと、アルトは不満そうに唇を尖らせた。
「つまんない」

「つまんなくないよ。水族館でイルカも見られるし、……でもなにができるか調べておくね」
 つい、そう言っていた。自分でも甘いとかおるは思う。が……。
「ほんとに!? 嬉しい!」
 アルトの顔がぱあっと輝いた。彼の笑顔に、甘くなるのは仕方ないな、と苦笑が漏れた。



 かおるは北斗と打ち合わせを重ねた。
 彼はたいてい『AI特別研究室Ⅱ』にいるので、打ち合わせはもっぱらメールか音声通信だ。
 アルトを海で遊ばせたい、という希望は汲んでもらえた。北斗は最初からそのつもりだったらしい。

 北斗は日帰りだが、かおるとアルトは一泊する。アルトにお泊りの経験をさせるためだ。
二日目はかおるが点検に行く。任されたのは海洋上でのAIロボットイルカの点検だった。通常、AIイルカと呼ばれている。
 点検などの各スケジュールを決め、当日を迎えた。

 水族館があるのは静岡県。伊豆半島の小さな湾の一角で、アルトはこんなに遠出をするのは初めてだ。
 かおると北斗は駐車場で自動運転車(ビークル)を降り、北斗と別れる。

 関係者通用口へ向かう北斗の後ろ姿を見送り、スーツの彼もレアだな、とかおるは思う。
 いつも黒い服に白衣だから、黒が好きなのかと尋ねたことがあった。
< 6 / 51 >

この作品をシェア

pagetop