お別れの 選択


「ごめん! 待たせた!」

どこかで調達したのか透明のビニール傘をさして拓人が現れた 明らかに小さいビニール傘からはみ出してたところはご多分に漏れずびしょびしょになってた

「ゲリラ豪雨ってほんと厄介だよな」

「うん…」

「ほら、一緒に買っといた」

そう言って同じ傘をわたしに差し出す

「この傘小さいから一緒に入るとかできんだろうと思ってな」

用意周到な笑顔が頼もしく感じた

「靴 濡れちゃった…」

「ん?」

拓人はわたしの足元に目をやる
雨に濡れて色が鈍く変わったわたしの靴…

「え? それソール薄くなって穴開きそうって前に言ってなかった?」

「うん… ほら」

靴の裏を見せる

「もうダメだって 靴下びしょびしょになってんじゃねえの? 」

「だって大切な靴なんだよ、拓人にもらった大切な靴なんだよ」

「わかってるよ 大事にしてくれてんのもしってるし ありがたいし、嬉しい…」

いちいち言わせんなよって表情もたまらなかった
この顔もわたしだけの特権だとほくそ笑んだ

「だけどな、それとこれとは別! 美々にもしなんかあったらどうする? 靴なんて足を守ってなんぼのもんだろ? なんかあったらおれの責任みたいに感じていいのか?」

「それは…やだ」

「だろ? だったらもうその靴とはお別れしろ?
いいな?」

なんも言えんかった 拓人の言ってることも理解できたし 納得しかなかった だけど、だけど…

「思い出にしてくれたらいい モノはなくなるけど思い出はなくならん 忘れなきゃいいじゃん」

なんか拓人の言ってることかっこよく感じた




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