満月に引き寄せられた恋〜雪花姫とツンデレ副社長〜
そして、もう抵抗することを諦めていた。
“どうせ私はついていない”、そう思いながら、ぎゅっと目を閉じ、最後の一撃を覚悟する。
その瞬間、ふっと、体が軽くなった。
そして、やさしく抱きしめられる感覚。
……、あっ、熊男の香りだ。
やっぱり、助けに来てくれたんだ。
安心したとたん、押し寄せるように涙があふれ出す。声も出せずに泣く私の頭を、彼はいつものようにポンポンと優しく撫で、そっと耳元で言ってくれた。
「もう大丈夫だ。俺がついてるから」
その言葉に、小さく頷いた。
改めて辺りを見渡すと、警備員の人たちが倉本さんを取り押さえ、西園寺社長と弁護士の伊集院先生がこちらに近づいてくる。
「空月さん、助けるのが遅くなってしまって、本当に申し訳ない」
社長が頭を下げ、副社長である熊男が私の右手の状態を報告する。
「今から近衛病院へ彩巴を連れていく。あとの処理は任せた」
「ああ、わかった。あの男のことは、俺に任せてくれ。
空月さん……、お大事に」
そう言った伊集院先生の瞳の奥に、ふと、暗く鋭い光が走ったように見えた。
……、気のせいだったのだろうか。
熊男の幼なじみである近衛彰人先生に、右手を診てもらった。幸いにも骨には異常がなく、強めの打撲で済んだという。
完治までおよそ1カ月。でも、桐箱デザインのデッドラインまでは、あと2週間。
多少の違和感はあるものの、指は動く。
このまま制作に支障が出なければいいけれど……。
病院の帰り道、歩きたいという私のわがままを、熊男は黙って受け入れてくれた。
途中で見つけた小さな公園のベンチに、ふたり並んで座る。
この1カ月、いろんなことがあった。いや、ありすぎたと言ってもいい。
そんな中で、私は彼に先月の感謝をまだ伝えていないことを思い出す。
「あっ、あの……、さっきは助けてくださってありがとうございました。それと、先月も……。お礼を言えなくて、すみませんでした」
「京が言ったように、助けるのが遅くなって悪かった。おまえに怪我までさせてしまって……」
また、彼は私の頭をポンポンと撫でてくれる。その表情には、どこか切なさの混じった微笑みが浮かんでいた。
『助けるのが遅くなった』と社長にも言われたけれど、もし、誰も来てくれなかったら……、と考えると、たった“打撲”で済んだことが、どれほど幸運だったのかと思い知らされる。
……、助けてもらえなかったら。
そう考えただけで、全身がゾッとし、自然と身震いが走った。
“どうせ私はついていない”、そう思いながら、ぎゅっと目を閉じ、最後の一撃を覚悟する。
その瞬間、ふっと、体が軽くなった。
そして、やさしく抱きしめられる感覚。
……、あっ、熊男の香りだ。
やっぱり、助けに来てくれたんだ。
安心したとたん、押し寄せるように涙があふれ出す。声も出せずに泣く私の頭を、彼はいつものようにポンポンと優しく撫で、そっと耳元で言ってくれた。
「もう大丈夫だ。俺がついてるから」
その言葉に、小さく頷いた。
改めて辺りを見渡すと、警備員の人たちが倉本さんを取り押さえ、西園寺社長と弁護士の伊集院先生がこちらに近づいてくる。
「空月さん、助けるのが遅くなってしまって、本当に申し訳ない」
社長が頭を下げ、副社長である熊男が私の右手の状態を報告する。
「今から近衛病院へ彩巴を連れていく。あとの処理は任せた」
「ああ、わかった。あの男のことは、俺に任せてくれ。
空月さん……、お大事に」
そう言った伊集院先生の瞳の奥に、ふと、暗く鋭い光が走ったように見えた。
……、気のせいだったのだろうか。
熊男の幼なじみである近衛彰人先生に、右手を診てもらった。幸いにも骨には異常がなく、強めの打撲で済んだという。
完治までおよそ1カ月。でも、桐箱デザインのデッドラインまでは、あと2週間。
多少の違和感はあるものの、指は動く。
このまま制作に支障が出なければいいけれど……。
病院の帰り道、歩きたいという私のわがままを、熊男は黙って受け入れてくれた。
途中で見つけた小さな公園のベンチに、ふたり並んで座る。
この1カ月、いろんなことがあった。いや、ありすぎたと言ってもいい。
そんな中で、私は彼に先月の感謝をまだ伝えていないことを思い出す。
「あっ、あの……、さっきは助けてくださってありがとうございました。それと、先月も……。お礼を言えなくて、すみませんでした」
「京が言ったように、助けるのが遅くなって悪かった。おまえに怪我までさせてしまって……」
また、彼は私の頭をポンポンと撫でてくれる。その表情には、どこか切なさの混じった微笑みが浮かんでいた。
『助けるのが遅くなった』と社長にも言われたけれど、もし、誰も来てくれなかったら……、と考えると、たった“打撲”で済んだことが、どれほど幸運だったのかと思い知らされる。
……、助けてもらえなかったら。
そう考えただけで、全身がゾッとし、自然と身震いが走った。