クールな同期は、私にだけ甘い。
【蓮side】

桜井が打ちのめされている姿を見るのは、正直胸が痛んだ。

彼女の震える小さな肩を見るたび、慰めて抱きしめてやりたい衝動に駆られる。

しかし、俺はその衝動を必死に抑え込んだ。

桜井のあの小さな背中に、何度手を伸ばしかけたことか。

だが、ここで安易に優しい言葉をかけてしまうと、彼女の真の成長には繋がらないと俺は分かっていたからだ。

過去の俺のように、思考停止に陥り、自ら才能を潰してしまうことだけは避けたかった。

桜井の才能を誰よりも信じているからこそ、今は突き放す優しさも必要だと思った。

『大丈夫。桜井なら、必ず乗り越えられる』

心の中でそう唱えながら、俺は彼女の横顔を見つめた。

彼女がこの試練を乗り越え、デザイナーとしてさらに大きく羽ばたく姿を、俺は誰よりも待ち望んでいる。

俺自身も、このプロジェクトを通して、桜井と共に成長し、互いの存在がかけがえのないものになっていくのを実感していた。

この感情が、ただの同期愛ではないことを、俺はすでに自覚している。

彼女の隣が、いつしか俺が心から安らげる場所になっていた。
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