クールな同期は、私にだけ甘い。
「でも、もうこんな時間だし……」
遠慮がちに答える私に、萩原くんはフッと笑った。
「なんだ、遠慮するなよ」
その言葉に、私の表情は一気に明るくなった。
萩原くんと二人きりで食事なんて、ほんと夢みたい。
「うん。それじゃあ……お願いします!」
私は、弾む声で答えた。
オフィスを出ると、ひんやりとした秋の夜風が頬を撫でる。日中の喧騒が嘘のように、街は静まり返っていた。
「桜井、どこか行きたい店とかある?」
隣を歩く萩原くんが、尋ねてきた。
こんな状況で気の利いた店など思いつくはずもなく、私は首を横に振る。
「ううん、どこでも……」
「そっか。それじゃあ、俺の行きつけの店に行こう」
そう言うと、萩原くんは迷いなく歩き出した。
萩原くんの行きつけのお店……一体どこだろう?
彼の少し後ろを、私はドキドキしながらついていく。