クールな同期は、私にだけ甘い。
「どうした、桜井?」
「ううん、なんだか……夢みたいで。萩原くんと、こんなふうに二人でご飯を食べるなんて」
素直な気持ちを口にすると、萩原くんは少し驚いたような顔をし、優しく微笑んだ。
「そっか。俺も、お前とこうしてゆっくり話すのは、初めてだな」
しばらく雑談していると、お蕎麦が運ばれてきた。出汁の効いた温かい香りに、食欲をそそられる。
さっそく一口食べると、じんわりと体の芯まで温かさが広がった。
「美味しいね、このお蕎麦!」
「だろ? ここの出汁は、最高なんだ」
萩原くんも満足そうに、お蕎麦をすすっている。温かいお蕎麦と、隣にいる彼の存在が、私の疲れた心と体を癒していく。
食事中、萩原くんはこれまでのプロジェクトの苦労や、今後の展望について穏やかに話してくれた。
彼の話を聞いていると、私の心には不思議と力が湧いてくる。
食事が終わり、店を出ると、外の空気はさらに澄んで冷ややかになっていた。
「送っていくよ」
萩原くんが、当然のように言ってくれた。
「でも、悪いよ」
「遠慮すんなって。夜道を、女子ひとりで歩かせるなんて、そんなことできねえから」
「萩原くん……」
女子扱いしてくれたことが嬉しくて、私はお言葉に甘えることにした。
「それじゃあ……お願いします」