クールな同期は、私にだけ甘い。

後日、プロジェクトの成功を祝う打ち上げが、賑やかな居酒屋で開かれた。

「お疲れー!」

同僚たちの労いと称賛の声が飛び交い、グラスを傾けるたびに高揚感が増していく。

私は何度も萩原くんと乾杯し、プロジェクトの成功を喜び合った。

普段あまりお酒を飲まない彼も、この日は少しだけ羽目を外しているようだった。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づけば終電の時間が迫っていた。

酔いと疲労が混じり合い、足元が少しおぼつかない。

「桜井、終電、間に合いそう?」

萩原くんが心配そうに声をかけてくれる。

時計を見ると、すでに最終電車の時刻を過ぎていた。

「あ……やばい。乗り遅れたかも」

「だろうな。仕方ない、タクシーで帰ろうか」

萩原くんの言葉に、私は少しホッとした。

この高揚感を抱えたまま、もう少しだけ彼と一緒にいたい。そんな密かな願いが叶えられたようで、胸の奥がじんわりと温かくなる。

タクシーに乗り込むと、高揚感と疲労が混じる中、窓から流れる都心の夜景をぼんやりと眺めた。

ビル群の灯りがきらめき、車内には心地よい沈黙と微かな切なさが漂っている。

この時間が、ずっと続けばいいのにと願う一方で、萩原くんへの募る想いに胸が苦しくなる。

しばらくして、タクシーは私が住むマンションの前に着いた。私は感謝を伝え、タクシーを降りる。

「じゃあね、萩原くん。今日は本当にありがとう」

そう言って、振り返ろうとしたそのとき。

「待って」

萩原くんが、後部座席から降りてきた。

どうしたんだろう?
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