クールな同期は、私にだけ甘い。
彼はいつもオフィスで着ているカッチリとしたスーツではなく、ネイビーの落ち着いたニットに、ゆったりとしたチノパン姿だった。
普段の彼からは想像できないラフな服装が、かえって彼本来の魅力を引き出している。
柔らかな素材のニットが、彼のしなやかな筋肉を際立たせ、その優しい色合いが彼の表情を一層穏やかに見せた。
私は思わず、高鳴る胸元に手を当てる。
いつものスーツ姿の蓮も素敵だけれど、今日の彼はもっと親密で、私の知らない「蓮」がそこにいた。
「琴音! 悪い、待った?」
蓮が近づき、優しく微笑む。その笑顔を目にしたら、不思議と緊張がふっと解けた。
「ううん、私も今来たところ。蓮、今日の服装も素敵だね」
思わず口に出すと、蓮は照れたように少し目を伏せた。
「そうか? 琴音もその服、よく似合ってる。可愛いよ」
「っ!?」
蓮ったら、かっ、可愛いって……!
ストレートな言葉に、頬が一瞬で熱くなる。
「あっ、ありがとう……」
照れくさくなって俯く私に、蓮はフッと笑い、当然のように私の手をそっと繋いでくれた。
「それじゃあ、行こうか」
彼に手を引かれながら、私たちは並んで歩き出す。
「ねえ、今日はどこに行くの?」
「それは、着くまで内緒」
職場ではあまり見せることのない、いたずらっぽい笑みを浮かべる蓮。
そんな彼を、愛おしいなと思ってしまった。