クールな同期は、私にだけ甘い。
蓮が連れてきてくれたのは、落ち着いた雰囲気のフレンチレストランだった。
店内に足を踏み入れると、柔らかなキャンドルの灯りがテーブルに控えめに彩りを添え、落ち着いた雰囲気が広がっていた。
蓮はさりげなく私の椅子を引いてくれ、そのスマートな行動に早くも私の胸がときめく。
席に着くと、蓮がメニューを私に渡してくれる。
「琴音、何か気になるものはあるか?」
「ううん、蓮がおすすめしてくれるものでいいよ」
こういうお店に来るのが初めての私は、ソワソワして落ち着かない。
「あの……蓮は、よくこういうお店に来るの?」
「ああ、たまにな。一人で来ることが多いけど、今日は琴音と来られて嬉しいよ」
蓮の言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
「そうなんだね。私も今日、連れてきてもらえて嬉しい」
食事中、普段のクールな彼からは想像できない、細やかな気遣いに私は何度も驚き、心がいっぱいになった。
彼が以前「面白い展示がある」と話してくれた美術館のチケットを、食後のデザートと共にサプライズで手渡してくれたり。
私の好みに合わせて、ソムリエと相談しながらワインを選んでくれたり。
彼の優しい眼差しが、ワインのグラス越しに何度も私に注がれるたび、私の心臓は甘く脈打った。
他愛ない会話を交わしながら、私たちはゆっくりと食事を楽しむ。
「蓮は、休日は何をすることが多いの?」
「美術館やレコード店を巡ったり、カフェでひたすら読書に没頭していることが多いな。琴音は?」
「私は、最近は仕事に夢中だったから、あまり趣味とかって考えたことなかったかも。でも、蓮の話を聞いていたら、陶芸とかも一度やってみたいなって思ったよ」
「そうか。それじゃあ、今度一緒に行くか」
「うん! ぜひ」
普段の完璧な蓮のイメージとは違う、人間味あふれる素顔に触れるたび、もっと彼のことを知りたいという気持ちが増していく。
蓮と過ごすこの温かい時間は、私にとってまさに夢のようなひとときだった。