クールな同期は、私にだけ甘い。
「キレイ……」
煌めくビル群の光が、まるで夜空の星のように瞬いていた。
私はふと、これまでの自分を振り返る。
スランプに苦しみ、自分の無力さに打ちひしがれた日々。そんな深い絶望の淵で、私を見つけ出し、光を灯してくれた蓮。
彼と出会ってからの毎日が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
彼の存在が、私をどれほど強く優しくしてくれたか。
『大丈夫。桜井なら、必ず乗り越えられる』
あの日の彼の声が、言葉にならずとも、確かに私の心に響いていた。感謝と温かい愛情が、胸いっぱいに広がる。
そのとき、背後からコツコツと、馴染みのある足音が近づいてくるのを感じた。
ゆっくりと振り返ると、そこに立っていたのは蓮だった。
彼の瞳は、夜の暗闇の中でも私を真っ直ぐに捉え、静かに微笑む。
「もしかしたら、琴音もここにいるかなって思って。やっぱり、ここにいたのか」
蓮もまた、自然とこの場所に足が向いたのだと言う。
私たち二人が、同じ場所を「始まりの場所」として心に刻み、無意識のうちに引き寄せられることに、言葉にならないほどの感動が込み上げた。
私たちは、静かに隣り合わせのデスクに腰掛ける。
「蓮、これを見てほしいの」
私はノートパソコンを開き、現在取り組んでいる大手クライアントのウェブサイト企画書を彼に見せた。
そこには、あの夏の日のスランプが嘘のような、私らしい温かさと繊細さが光るデザインがあった。
「……」
数秒の沈黙が、私には永遠のように感じられた。
「どう……かな?」
口を閉ざしたままの蓮に、私はドキドキしながら尋ねる。