絆の光は未来へ

日常と身体のサイン

光希の診察を終え、病院を出たあゆかは、慣れた足取りでバス停へと向かった。制服のスカートの下で、先ほどまで光希の指が触れていたデリケートな部分が、まだじんわりと熱を持っているように感じられる。彼の口から出た「炎症の進行」という言葉が、ずしりと心にのしかかっていた。

バスに揺られ、あゆかは窓の外の景色をぼんやりと眺める。県立衛生看護専門学校。憧れの場所であり、光希と同じ医療の道を志す場所。しかし、その日常は、想像以上に厳しかった。

「あゆかー、次の実習レポート、やばくない!?」

バスを降り、校門をくぐると、すぐに親友の真央が駆け寄ってきた。彼女の声はいつも明るく、あゆかの暗くなりがちな気分を吹き飛ばしてくれる。

「まだ途中……っていうか、全然終わってない」あゆかは苦笑した。

真央は「だよねー!あの量、絶対徹夜コースじゃん!」と大袈裟に嘆いてみせた。衛生看護学科の授業は座学だけでなく、実習や演習の比重も大きい。

特に基礎看護学の実習レポートは、膨大な資料の読み込みと考察が必要で、連日寝不足が続いていた。


教室に入ると、周囲からは同じように疲労の色を浮かべたクラスメイトたちの声が聞こえてくる。「マジでやばい」「もう眠い」「栄養ドリンクが主食」――そんな会話が飛び交う。
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