婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
それなのに、ルディエル様は迷いのない足取りで彼女の隣に立ち、その肩に手を置いた。

「彼女は――聖女なのだ」

その一言に、私の心臓が止まりそうになった。

「……聖女?」

思わず、呟くように問い返していた。

聖女。

この世の穢れを浄化する、神に選ばれし存在。

伝説や神話に登場するような、特別な力を持つ女性。

それが、彼女?

「それこそ、我が王太子妃。ひいては王妃に相応しい」

ルディエル様はそう言って、誇らしげに彼女を見つめた。

それを受けて、シェレナさんも優雅に微笑み返す。

まるで――二人だけの世界を築いているかのように。

誰の目も気にせず、誰の声も届かないように。

その光景が、胸に突き刺さった。
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