婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ～平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される～

「お、お待ちください！」

気づけば私は、声を張り上げていた。

胸の内に渦巻く疑問と混乱が、抑えきれずに溢れ出す。

王太子妃だなんて、そんな大役を、どこの誰かも分からない女性に任せていいはずがない。

「なぜ、そのような方が……王太子と出会うことができたのですか？　聖女とは、本来、国土を巡って浄化の旅をしているのではないのですか？」

言葉を選びながらも、声は震えていた。

「本当に……聖女なのですか？」

私は彼女をまっすぐに見つめた。

「何か、証拠でも……」

その瞬間、シェレナさんは静かに微笑み、胸の前で両手を丸めるように重ねた。

すると、彼女の手の中から淡い光が滲み出した。

柔らかく、あたたかく、まるで春の朝日のような光が、ふわりと空中に舞い上がっていく。

それはやがて天井へと昇り、舞踏会場を神秘的に照らし出した。

誰もが息をのむ中――私は、凍りついたように動けなくなっていた。