婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
「……本物……」

私は呆気にとられたまま、ぽつりと声を漏らした。

あの光――疑いようもなく神聖で、幻想的で、見る者の心を奪う力があった。

そんな私に、シェレナさんはにこやかに、しかし確かにこう言い放った。

「お生憎さま。」

その声音は柔らかいのに、刃のように鋭かった。

「なんの能力もないくせに、ルディエルの妃になろうとしていたのは……貴女の方じゃなくて?」

「えっ……」

思わず一歩、後ずさった。

シェレナさんは続ける。

「公爵の威厳は、ご両親にあるのであって……あなたにはないのにねえ。」

カチン、と音がした気がした。

何かが、頭の奥で切れるような感覚。

それが私の限界だった。

気づけば、私は手を上げていた。

そして――思いっきり、彼女の頬へと振り下ろしていた。

パァンッという乾いた音が、舞踏会場に響き渡った。
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