婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
でも、よく見ると――私の手が触れたはずのシェレナさんは、無傷だった。

代わりに、頬を赤く腫らしていたのは……ルディエル様だった。

「ル、ルディエル様……!」

私は思わず声を上げた。

なんてことを……私は、あの方に……!

「無礼者!」

誰かが鋭く叫んだ。

その声を皮切りに、周囲が一斉に騒ぎ始める。

「王太子に手を上げるなんて、前代未聞だ!」

「暴力を振るうなんて、令嬢にあるまじき行為!」

「愚か者!」

浴びせられる非難の声、責め立てる視線。

私はその場に立っているのがやっとだった。

足が震え、手が震え、視界がぐらつく。

私はただ、悔しくて、悲しくて――

だけど、あの言葉に、あの態度に……黙っていられなかったの。

だけど、誰も、私の気持ちなんて理解しようとしない。

私の中で、何かがぽきんと折れた音がした。
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