婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
「ノエルナ。」

ルディエル様が、私の名前を呼んだ。

ああ、この声……何度も夢に見た、優しくて、甘くて、私だけのものだった声。

だけど――次に放たれた言葉は、あまりにも残酷だった。

「未来の王太子妃に手を上げようとしたこと、許すわけにはいかない。」

「ルディ……エル……様?」

口の中がからからに乾いて、声がうまく出なかった。

本当に、あのルディエル様なの?

私のことを、婚約者として抱きしめてくれたあの方が――

「えっ……?」

ルディエル様の瞳の奥が、一瞬だけ金色に光ったように見えた。

気のせい? それとも……

「ノエルナを牢獄へ入れろ」

「そんなっ!」

思わず叫んだ瞬間には、もう護衛たちが私の腕をつかんでいた。

冷たい縄が容赦なく手首に巻かれ、きつく締め上げられる。

「やめて!ルディエル様、お願いです……!」

私の声は、誰にも届かないまま、広間の中で虚しく反響していた。
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