婚約破棄されましたが、聖女様ごとまとめてざまぁさせていただきます ~平凡令嬢、イケメン魔導師に拾われ溺愛される~
「ええー……シェレナさん?」

私はできるだけ柔らかい声で呼びかけた。

「はい、なんでしょう?」と、彼女はにこやかに返してくる。

その様子に少し苛立ちを覚えながらも、私は丁寧に言葉を選んだ。

「王太子妃になるには、それ相応の身分が必要ですの。ご存じないのかもしれませんが……」

やんわりと、けれど確実に釘を刺す。

「一般人は、王太子妃にはなれませんよ?」

だがその瞬間、シェレナさんはふわりと笑った。

「確かに、私にはあなた方のような“親の七光り”はございませんね」

「……ん?」

思わず聞き返してしまう。

今、彼女は何と言った?

“親の七光り”?

私たち貴族の誇りや、積み重ねてきた家の歴史を、そんなふうに侮辱したの?

それ相応の身分を“七光り”と呼ぶ――

その無知と傲慢さに、私は初めてこの女性に対して、言いようのない嫌悪感を抱いた。
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