五妃伝 ~玉座に咲く愛~
後宮の奥、庭園に面した東殿にて――

妃の一人、蘇玉蓮は、薄紅の衣の袖に手を添え、静かにため息をついた。

「……新しい妃が迎えられたのね。しかも、まだ年若い娘だと聞くわ。」

細い眉がわずかに寄る。

玉蓮は、かつて“寵姫”と呼ばれた。

その優れた美貌と穏やかな物腰、そして医家の娘らしい知性が、玄曜の目に留まったからだった。

だが、今――

「私にはもう、興味がないのかしら……」

その呟きに、そよ風すらも答えない。

いつしか玄曜が寝所に訪れる回数も減っていた。

玉蓮は、黙ってその変化を受け入れていたつもりだった。

だが、“賢妃”という新しい妃の噂が広がったとき、心の奥底がざわついた。

(皇帝が……他の女を、抱いた?)

しかもその娘は市井の出身だという。

玉蓮には信じ難いことだった。
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