五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「どうだろう、蘇殿。」

玄曜は、問診の途中にふと問いかけた。

「このように胸が詰まるのは、病か……あるいは、ただの疲れか。」

父が答えかけるより早く、玉蓮が口を開いた。

「おそらく――少し、不安がお強いのだと思います。」

「不安、か。」

その言葉に、玄曜は目を細めた。

言葉を選ぶ慎重な父とは違い、娘は真っすぐに核心を突いた。

その無邪気で率直なまなざしに、玄曜は思わず目を奪われた。

それが、始まりだった。


何度か宮中に足を運ぶうちに、玉蓮の胸には確かな想いが芽生えていた。

寡黙でありながらも誠実で、たまに見せる柔らかな笑みが――どうしようもなく心に残る。

けれど、その想いを口にすることなど、許されるはずがなかった。
< 44 / 82 >

この作品をシェア

pagetop