五妃伝 ~玉座に咲く愛~
「それでもいい。あの人の妃に――その末端にでも迎えられたら。」

玉蓮は、胸の奥でひそやかに願っていた。

ほんのわずかでも、あの御方の傍にいられるなら、それでよかった。

そんなある日。

いつものように父の手伝いとして、玄曜の私的な診療に随伴していたときだった。

玄曜がふいに玉蓮の名を口にした。

「玉蓮。君は、医者になるのかな。」

一瞬、心が跳ねた。

まさか、皇帝が自分の名を――覚えてくださっていたのか。

「いえ、そのような道は目指しておりません。」

抑えた声でそう返すのがやっとだった。

「では、誰かと結婚するのかな。」

その問いに、玉蓮は返す言葉を失った。

「できれば、あなたの妃に――」

その言葉が喉元まで込み上げたが、決して口にはできない。
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