番外編「休日のバーテンダーズ」
「しー! しーちゃーん!! ごはんできるよぉー!!
お兄ちゃんが全部食べちゃうよぉ。しーちゃんの分もー!!」
反応なし。
アールは大きなため息をついたあと、バンとぶしつけにドアを開ける。
「しーちゃん……」

セミダブルのベッドで、青年がひとりうつぶせに寝ていた。
その枕元にも、ベッドの下にも、彼の左手にも、本。
本だらけだ。本に埋まって寝ている。

「しー」
ベッドで寝ている弟をアールはあきれ顔で見る。今、背中から刺されて倒れたみたいな寝相だ。
「今日、休日だからお兄ちゃん許すけどね」
アールは弟のウェーブの爆発した黒髪をそっと撫で、彼の手から本を取り、ほかの本とまとめて本棚に戻した。
やれやれ。今日もひとりで朝ごはんを食べることになるらしい。溜まった家事もしなければ。

「早く起きておいで。待ってるよ。しー」
双子の弟にどこまでも甘い兄は、静かにドアを閉めた。
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