彼が甘いエールをくれたから
「本当に大丈夫だと思ってるんですか?」
「なにが?」
「忽那さんですよ」

 声の主は多治見くんと、もうひとりはおそらく筧くんだ。

「このままだと納期に間に合いませんよ」

 顔は見えていないけれど、多治見くんは間違いなくイラついている。
 私が不甲斐ないから、チームリーダーの筧くんに批判をぶつけたみたいだ。

「忽那は……自分のやり方でがんばろうとしてるんだ」
「なんのためのチームですか。サブリーダーなんだし、それじゃダメだと俺は思いますけどね」

 私のことで、筧くんを責めないでほしい。
 すぐさまふたりのもとへ行って、そう訴えたかった。それなのに、どうしても足が前に進まない。

『忽那さんって頼りないよね。失敗したら責められるのはこっちなのに』

 後輩社員からの、トラウマとなった一年前の言葉がまた頭をかすめた。
 あのときと同じだ。一生懸命取り組んでいるつもりなのに、なぜかうまくいかない。
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