彼が甘いエールをくれたから
 それからは毎日仕事漬けの日々だった。
 チームのメンバーそれぞれから、共有ファイルに進捗状況の報告があがってくるため、すべて細かく目を通していく。

「お疲れ」

 午後三時。ホッと息をついて休憩を取っていると、筧くんが休憩スペースへやってきて紙コップにコーヒーを注いだ。

「筧くんもお疲れ様」
「プロジェクト、順調だよな。よかったよ」
「筧くんのおかげだよ」
「俺? いや、うまくいっているのは忽那自身ががんばってるからだ」

 彼はやさしいからそんなふうに言ってくれるけれど、最大の功労者は間違いなくリーダーの筧くんだ。
 私の説明が拙かったり、行き届かないことがあったりした場合、彼がメンバーたちをフォローしてくれていた。彼がいなかったら確実に右往左往していただろう。

「ルミナの担当者とオンラインで打ち合わせをして、パンフレットとポスターのデザインにOKをもらった。もう少しだけカラーの調整が必要だけど」
「そうなんだ。よかったね!」
「ウェブのほうは?」
「うん、順調」

 ルミナの担当者は同世代の女性で、傲慢な部分などなく、とても丁寧な対応なので仕事がやりやすい。
 おそらく筧くんも同じような印象を持っていると思う。

「終わったら盛大に打ち上げをやろうな」

 気が早いなと思いつつも、打ち上げは仕事をやり遂げた達成感で大いに盛り上がると想像がついた。
 チームのメンバーは戦友みたいなものだ。

 オフィスに戻ると、眉根を寄せて視線を下げている加山さんの姿が目に入った。
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