すべての花へそして君へ①

(まだ彼氏にすらなってないのに、いろいろすっ飛ばして向こうの親の了承を取ってしまった)


 いいんですかね? いや、オレはいいんですけど。あいつしかいないんで。……本人、知らないけどね。本人差し置いて、なに勝手に話してんだよって話だけどね。


(……ま。もうオレ以外なんて選ばせないけどね)


 とか言いつつ手が震えてるし。……弱っ。オレやっぱり弱っ。


「ああー……。オレの辞書の中から【ゆっくり】という言葉を今すぐ無くしてしまいたい」


 なんですか、ゆっくりって。……もちろん知ってますとも。

【ゆっくり】
 1.動作が遅いさま
 2.時間的にゆとりがあるさま
 3.気持ちにゆとりのあるさま
(※参照:大辞泉)

 オレの気持ちに、ゆとりなんて全然ないけど。だからこんなんになってるんだし。


「……でも、ゆっくりね」


 ここに来るまで散々時間とページ数をかけてきたけど、別にオレ、全然ゆっくりしたつもりはないから。


(あいつが……っ、かわいい反応するのが悪いんだって)


 のっそりと。弱った体に鞭打って腰を上げて、取り敢えず歩く。


(まあ、あいつの気持ちも聞けたし。嫌われたくないからいい格好したいっていうのは誰だってそうだし……)


 でも、絶対オレ嫌いになんかならないけど。まあ、そんな風に思ってくれてるのは男冥利に尽きるというか、めちゃくちゃ嬉しいですけど。


「ゆっくりかー……。そうだよな。ゆっくりだよなー……」


 いや、流石にそういうことをさっさとすっ飛ばすようなことはしないけど。
 ……あいつにとっては、これからがあることこそ何よりの幸せなんだろうし。あいつの口から『これから』なんて言葉が出るだけで聞けるだけで、オレだってすげー嬉しいし。それは、絶対大事にしてやりたいから。……だから。


「……ゆっくりって、どこまでがゆっくりなんだろ……」


 あおいさん。あなた、はじめてで……とか言っていらっしゃいましたけど。オレだって一緒だからね。わかってんだろうか、あの人。


「ま。それもそのうちか」


 取り敢えず、泣かせたり怖がらせたりだけはしたくな……しようものなら、四方八方から拳やら蹴りやらが飛んでくるだろうから、それは絶対にしない。したくない。それは向こうと、これからいろんなことを話せば自ずとわかるでしょう。


「……これから……」


 この先もずっと、オレの近くにあいつがいてくれる未来が続くように。そんな未来を描けることが、すごく嬉しくて。幸せで。頭の中は、あいつのことでいっぱいだった。……いっぱい、だった▼


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