すべての花へそして君へ①
そしてはじまる本格的な拷問
「あのね? 正直に話すと、わたしはアキラくんを避けてたとこがあるの」
「……? そんな風には全然見えなかったが」
「あ。違うよ? 生徒会に入る前。……アキラくんだけは、知ってたから」
彼だけは、左耳の罪をわたしは知っていたから。
「見てたんだ。……見たく、なくて」
「……そうか」
自分のした罪をまじまじと見せつけられていて、いつかバレてしまうのではないかと、気が気じゃなかった。
「だったら、葵も俺のことを見ていてくれたんだな」
「え……?」
「そういうことだろ? 俺がいつおかしくなるか、見ていてくれていたんだろう?」
「……あきらくん」
「それも含めて、ありがとう」
そんなやさしい言葉をかけてくれる彼に、感謝を言いたいのはこちらの方なのに。込み上げそうになる涙で、上手く言葉が続かなかった。
「……きっと葵はさ、生徒会になっていなくても助けてくれてたと思うよ。俺のこと」
「え?」
「絶対そう」
「……ははっ。そうかもね?」
だって、その左耳を見る度に『どうやったら彼に気付かれずに取れるか』……なんてこと、考えていたんだから。
「だから、ありがとう葵。俺はお前を好きでよかったよ」
「こちらこそ。……わたしのこと、好いてくれてありがとう。アキラくんっ」
泣きそうになりながら笑ったわたしに、アキラくんからはやさしい笑顔と、小さく安堵が零れていた。
「じゃあ葵。十分お前の気持ちもわかったところで、俺も取り敢えずピッチングコーチのフォローに行ってくることにするよ」
腰を上げるアキラくんに、わたしは小さく待ったをかける。
「ん……? どうしたんだ」
「ちゃんと言わせて? みんなして返事はいいって言うんだもん。せっかくヒナタくんがくれた機会なのにっ」
「……俺は練習台か。今からは本格的な拷問か」
「ぅえっ!? そういうことじゃないよ! ご、拷問はよくわかんないけど……?」
「ははっ。いや、うん。わかってるわかってる。聞くよ。惚気でもなんでも」
「……返事って言ってるじゃん」
「知ってるか葵。返事は惚気だ。相手がいない時はちゃんと返事かも知れないが、好きな相手がいる時点での返事は大抵、そいつへの愛を大抵語る」
「……マジっすか」
「ああ。……だからまあ、翼も惚気を受け付けるとか言ってたみたいだけど、あいつに話すのが無理そうな時は俺が聞いてやるからな」
「そんなこと言って、襲う口実とか言うんじゃないよね」