すべての花へそして君へ①

 大きくため息をつきながら、カエデさんが最後のタバコの火を消そうとした時だった。人とは思えない奇声にビビって、俺は大慌てで車の陰に隠れたのは。


「ビックリした~。まさか、アオイちゃんだったなんて」


 そして、まさかこんなところを徘徊してたなんて。カエデさんが連れて行ってくれてよかった。こんなところを見られでもしたら……傷付くのは彼女だ。


「……強く」


 結局俺は、何もできなかった。俺のことを助けてくれたのはアオイちゃんだし。みんなであり、ヒナくんだ。結局、何もしてない。
 ただ、今でもこんな俺を想ってくれている彼女に、前へ進めるよう言葉を贈っただけだ。それだけだ。

 どうしてもっと強くなかったんだろう。あの頃、自分の部屋に閉じこもって。何を……っ、したって言うんだ。先生にも助けてもらったのに、先生も守れなかった。
 アオイちゃんは悪くない。本当に、悪くなんてないんだ。俺があの時、ちゃんと話してれば、ちゃんと気が付いていれば……。

 ……もう、何もかもが手遅れだけど。


「アオイちゃん……」


 君の強さが羨ましい。君の温かさが、やさしさが、愛おしい。


「アオイ、ちゃんっ」


 俺なんかよりも、きっとつらかったんだろう。俺なんか、全然つたくないじゃないか。つらかったのは、俺に関わったユズちゃんと先生じゃないかっ。
 わけがあったってわかっていても。それでも、守れなかった。俺が弱かったから。だから、ユズちゃんが傷付いた。先生だって大怪我をした。アオイちゃんだって……。苦しませたんだ。俺は。


「ごめん。アオイちゃん……。ごめんね」


 俺はただ車の前に座り込み、ムカつくくらいに綺麗に瞬く星空を見上げていた。


「カナデくんは、何に謝ってるのかな」


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