すべての花へそして君へ①
「そっか。でもごめんなさい。あたしも、かなくんが好きなんだー」
「……ゆずちゃん」
伝えよう。ただひたすら。あなたへの愛を。
「まだ、かなくんが好きなんだ。あの頃からずっと、かなくんが好きなんだ。かなくんだけが、あたしは好きなんだ」
ずっとずっと、好きだった。だから、ずっと後悔した。やさしい彼から……離れてしまったことを。
やさしいんだ。本当に。かわいくてやさしくて。そんな彼に、あたしは恋い焦がれたんだから。
「好きなら好きでいいじゃん。お互いさ? あたしはあおいちゃんも好きだもんっ! だからひっそり応援もしてる」
好きなのには変わりない。だからまさか、応援するなんてことはないと思ってたけど、流石に彼女の魅力には敵わない。あたしだって、あおいちゃん大好きだし!
「……でも、あの時も言った。ちょっとかなくんが振り向いて、あたしのことを見てくれただけで嬉しいから……って」
あたしも、かなくんと一緒だ。無理だ。無理なんだ。
ごめんね。あたしはどうやったって。あなたが好きなんだ。だから、振り向く時に気持ちがなくても全然いい。ただ、あなたが……笑っていられるなら。
「あたしは、あおいちゃんが好きなかなくんも好き。だから、かなくんが前に進めるように、あたしはちゃんと見ててあげる。あたしは、絶対見ててあげるから」
だから言おう。あなたへの愛とともに、この言葉を。
「進ませてもらったあたしが、……今度は進ませてあげるよ。いつでも」
あたしはちゃんと、前に進んだよ。それでもやっぱりね? 進んでも気持ちは変わらないんだ。だから今度は、あたしが手助けしてあげる。
またかなくんが笑えるように。大好きな人が笑っていられるように。
(あたしは、……ちゃんと見てるからね。かなくん)
小さく、お礼の声が聞こえた。こんなものに、お礼なんかいらない。だって、あたしが今度は返す番なんだから。
心から思った。あなたを好きで、本当によかったと。
しばらくしてかなくんが落ち着いたあと。部屋まで送ると言ってくれたけど、帰る気になれなくて遠慮した。申し訳なさそうに笑ってたけど、にい~っと笑って活を入れてあげた。
「かなくん! まだまだ諦めちゃダメだかんな!?」
「う、うん。頑張るよー……」
彼の背中をドンと押し、去って行く彼に元気に手を振ってあげた。
「頑張れ! かなくん! ファイトだ! かなくん!」
「ゆ、ゆずちゃん? 夜遅いから、ちょっとボリューム落としてね……?」
それでも、大きな声で応援してあげた。姿が遠くなっても、彼へ届くように。
「がんばれー!!!! がんばるんだぞかなくーん!!!!」
「あ、……ありがとー……」
何度も何度も。彼の姿が、見えなくなってもずっと。大きな声を、出したまま……。
……どれくらいしたかな。もういいかな。……いい、かな。……っ。