すべての花へそして君へ①
「女の子は、なんでこうも強いんかなあ」
ほんま、みんなかっこよすぎるやろ。泣かんかったんやな。えらいえらい。泣いたらカナがつらいだけやもんな。よう我慢した。
葵ちゃんとの会話も柚子ちゃんとの会話も、辛うじて聞こえていた程度。……でも、カナに言ったんやなって、思うた。とうとう、言うてしもうたんやなって。
いつやったかなー。組を出ていっても、また俺にはよう惚気るんやもんな。今、腕の中におる彼女のこともきちんと向き合えてからは、惚気が酷うなったな。
……カナは悪うない。柚子ちゃんやって、悪うない。
(信じられんかった……。信じんかった、俺が悪いねん)
でも、それももう今日で終わりな。葵ちゃんが申し訳なさそうにしとったんが、ようわかったわ。
(葵ちゃんかて悪ない。二人もや。悪いのは大人。大人たちやねん)
それももうやめようや。自分たちを、もう責めるのはやめや。
笑うとったら、福が来るんやから。俺のなんかで申し訳なかったけど、彼女がまた、笑えるようになるまで泣かしたった。
誰も見てへん。誰も知らんで。俺が隠したるわ。こんなん、罪滅ぼしにもならんけどな。
「悪かったなあ」
そう言うたら、ものすっごい速さで首を振った。顔は……見えんけど、まだ泣いとるんやろうな。
「……ありがとうな」
そう言うたら、今度は一回だけゆっくり縦に振った。……ほんま、俺が知っとる女は、強くてやさしい人ばっかりやな。
「もう、大丈夫か?」
「……だいじょうぶじゃ。ないです」
それから、部屋まで送ったったけど……せやかて、どないしたらええねん。
「……今度。お邪魔。しに行って。いいですか?」
「は? むさ苦しいだけやで」
真っ赤に目を腫らして。これやったら、隠した意味なさそうやん。
「今度。まさきさんたちと……。かなくんのいいところ何個出るか、やってみたいんです」
「ぶはっ。ははっ。なんやそれ」
やっぱ強いな。ほんま、すごいわ。
「そんなん、ええに決まっとるやろ。カナの落とし方、教えたるわ」
「……!!!! い、今すぐ知りたい……」
そんなん知るかいな。けどまあ、この子もいつか、ほんとの意味で笑えたらええなあ。
「もう流石に今日は休みや。寝られんのもわかるけどな。……目、ちゃんと冷やしとくんやで」
雑に頭を撫でてから、俺は煙草を吸いに建物を出た。
「……なんや、上手くいかんなあ」
でも、それが生きとる証拠や。そんなん、人生初めから上手くいっとったら怖いわ。
「みんなが、笑えるようになるんは、もうちょいかかりそうやな」
でもきっと来るやろう。みんなつらかったんや。せやから、この先は幸せが待っとる。
「見とってな。俺も、いろいろ頑張るわ。……ちゃーんと、覚えとくからな。今度、また会いに行くわあ」
落とし忘れた灰が、大きな塊になって……落ちる。
見上げた空には、まだまだ朝日は出そうにはなかった。