すべての花へそして君へ①
「ゴーヤチャンプルTシャツ~」
「え。要らない」
「がーん……」
「え。な、何? 何があったの?」
ハッキリ言ってわけがわからない。どうしたのかって聞いても、膝を抱えてしょげてるし。
「……ん? ゴーヤ……」
「……修学旅行先で作ったの」
「え!?」
「シントにお土産。あと、他にもあったけど、賞味期限切れちゃったから」
それを早く言えよ! そんなの額縁に入れて飾るしっ!
「ありがと葵。すごい嬉しい。大事にするよ」
「ほんとは喜んでない」
「いや、めっちゃ喜んでる。お前の手作りとか、着ないで大事にとっておくよ」
「着て欲しいから作ったのに。わたしも、ちょっと違うけど持ってるし……」
「まさかのペアルック!? 着る着る! 絶対着――」
「ヒナタくんも持ってるけど」
「額縁に入れる」
「ははっ。うん! シントにあげたから、シントがしたいようにして?」
嬉しそうに笑う彼女は、次はね~」と、また何かを出してくるようだ。
「はいっ。メリークリスマス!」
「え」
首元に、ふわっとやさしく巻かれていく。
「あおいさんお手製だぞ? 喜びたまえっ」
「……え。手編み……?」
そっと、手を伸ばす。手編みとは思えないほど丁寧に編み込まれているそれは、すごくふわふわで……あったかかった。
「そのマフラーには悲しみがいっぱい入っているのだよ」
「え」
「言いたくないこと言っちゃったから。シントがいない時に、こっそり編んでたの。いつか絶対に渡してやるんだって。そう思って」
「……あおい」
つらくなかった、と言えばそれは嘘になる。たとえ、葵がそれを嘘で言ったとしても。
けど、……もういいんだ。今、葵がこうして無事に帰ってきてくれて。笑ってくれれば。
(だから、……俯かないで)
笑顔を見せて欲しくて、そっと彼女の頬へと手を伸ばた。