すべての花へそして君へ①
「それから、バレンタインのチョコね? ちゃんとは準備できなかったから……」
気付いてるのか。わざとなのか。この行き場のなくなった左手をどうしてくれるんだ。葵さんや。
「お約束の……これ、ね?」
そんなことを思っていたら、ニコッと笑いながらその行き場のなくなっていたはずの俺の左手首に、青色のリボンを結び始めた。
(……葵)
「【ごめんなさい】シント。たくさんあるんだ。酷いこと言って【ごめんなさい】も、わたしがあなたを手放したくなくて【ごめんなさい】も」
それから次は朱色を。何重にも何重にも巻いて……巻いて。
「本当に本当に【ありがとう】。言っても言っても足りないよ。ずっと言うと思う。もういいって言っても言っちゃうから。それは覚悟してね?」
そして今度は白色を……。
「わたしは、ずっとずっとシントと【お話】してたい。最後なんて言わないでよ。皇がなんだ。朝日向舐めんなっ」
俺の代わりに、皇に腹を立ててくれる彼女を見るだけで。たったそれだけで、嬉しさや愛おしさが込み上げてくる。
そして最後。結ぶ前に、一度目が合う。巻かなくったって、もうわかってるっていうのに。お互いなんだかちょっと照れ臭くって、クスッと小さく笑いが漏れた。
彼女が結んだのは橙色。その色を俺に巻く意味は、本当のものと違うこと。その意味もちゃんと、俺はわかって――――
「感謝状!!!! パ~~ト2!!!!」
「ええっ!?」