すべての花へそして君へ①

「それじゃあ、お仕置きの再開ね」


 ……た、たぶん。報告が遅れた方のお仕置きかな? ど、どっちでも今はちょっと……。


「……っていうのはただのこじつけ」

「……。へ?」


 啄むような口付けをして離れていった彼は、少しだけ自嘲するような、申し訳なさそうな顔で笑っていた。


「ただ、……オレがあおいに触りたいだけ」

「……!!」

「お仕置きでも何でもない。ただオレが……」


 ……触れたくて触れたくてしょうがないんだ。


 余裕のない顔で。つーっと、彼の指が頬を撫で、耳の裏を通り、首筋に下りてきて。くすぐったい感覚に声は堪えたけれど、小さく体がバウンドして。


「あおい」


 吐息たっぷりの口付けは、深くそして熱く。砂糖菓子のように、とてもとても甘く。


「……ごめん。止まんない」


 ゼロの距離で熱い吐息と共にそう吐き出した彼は、深く。もっと深くを求めてきた。


「ん……っ、ふ」


 あまりにも性急な口付けに、一瞬逃げ遅れたわたしはあっという間に捕まって。逃げるわたしを、絡めて吸って。もう、わけがわからないわたしは、ただただ死なないように酸素を求めた。


「んはっ。……はあ。はあっ」


 息ができなくて、生理的な涙が流れたのに気付いた彼は、名残惜しそうに離れていく。


「……ごめん。余裕なかった」


 申し訳なさそうに目元へとキスを落とした彼に、首を振った。


「ん?」


 嫌で泣いたわけじゃない。ただ、まだ上手く息ができなくて。ただ、それだけ。


「……あおい。声、聞きたい」


 わたしだって、ヒナタくんに触れたい。わたしだって。……もっと。もっと……。


「……。きす。してほしい……」

「……言われなくても」


 彼の首に、しがみつくように腕を回して。本当に死んじゃいそうになるくらい、繋がってくる彼に、わたしは必死に応えることにした。


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