すべての花へそして君へ①

「ははっ! わーい! 大成功!」

「……声デカい」

「ええ!?  嘘!」

「うーそ」

「もうっ! ……ん?」


 よく見てみると、彼は起き上がってはいたものの、その場から全然動いていないようだ。そのことに、ぷうっと少し頬を膨らます。


「なんで捜してくれなかったの?」

「オレのとこに戻ってくると思ったから」

「え」

「案の定戻ってきた。ね? 動かなくて正解」


 その通り、元に戻ってきましたけどね。あなた、そこまで考えてたんですか?
 わたしが言うのもなんですが、絶対動くのが面倒だったんじゃないかと思うんですけど。


「実感湧いた? 叫び声を上げてたあんたをみんな捜しに行ったんだよ」

「うっ……」


 それについては、まだもうちょっと……。

 気付けば彼の服を掴んでいた。これはもう無意識だ。彼のおかげで、もうほとんど不安は拭うことができた。

 ……でもまだ少し、もう少し……。


(ヒナタくんが隣にいないと……)

「掴むんならこっち」


 震えている手が取られたかと思ったら、そのままゆっくりと引っ張り起こされた。


「服伸びるじゃん」

「ご、ごめっ、……!」


 ぎゅっと手を握られたかと思ったら、ヒナタくんは大きな鞄を担いで歩き出してしまった。


「えっ? ひ、ヒナタくん?」

「みんなのこと心配してるなら大丈夫。久し振りにここ来てはしゃいでるんだろうし。 そのうち気が付いて帰ってくるから」

(い、いえ。それもあるんですけど……)


 握られた手に戸惑っていると、彼は急ブレーキ。


「……なに。オレと手、繋ぎたくないの」


 なんですか。そのとんがったお口は。
 拗ねてるんですか、あなた。


「やっ、やめてくれ……」

「は? ……え。繋ぎたくないの? ……オレは繋ぎたいんですけど」

「やめてっ。初っぱなから鼻血が……」

「は?」


 繋ぎたくないわけがないっ!
 ただ。あのお。そのおおぉぉ……。


「……い、いいの?」

「……はあ」


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