すべての花へそして君へ①

「だから、まだまだ子どものあなたに大人の私からアドバイスね?」


 にい~っと笑う先生は、もう過去は過去で吹っ切れてるようで、少しほっとした。


「自分のことばかりに目を向けてることがまだまだ子ども。あおいちゃんだって、何かしらあなたに関して欲望があると思うわ? そしてきっと、それは似通ってると思うの」


 欲求不満を解消できるのは彼女ただ一人だけ。男女の関係は、お互いでどうにかしていくしかない。お互いがお互いをわかり合っていけばいい。


「きちんと、どう不満なのか伝えることできるから、少しずつ大人になっていくの。一気に子どもは大人にはなれないでしょう?」

「そう……ですけど。全部は流石に言わなくていいですよね?」

「何言ってるの。全部よ全部」

「マジですか……」


 一番言いたくない相手なのに? 欲求の塊の最低野郎ですって? 言うの? いやいや。言えないから絶対。


「あなたたちの間の絆は、そんな子どもみたいな欲望じゃ壊れるわけないでしょう? 今すぐじゃなくていいの。ちょっとずつ、お互いのことをきちんと知ればいいのよ。……信じなさい。あおいちゃんを。あなたが愛して止まない彼女を、これ以上ないほど愛してあげれば、返ってくるわ。それは必ず。あおいちゃんのことだからきっと、あなたの愛以上にあなたのことを愛しそうだけどね?」

「そうだと……。すっごい嬉しいです」


 きっと、返してくれるだろう。オレが好きな彼女は……きっと。きっと、オレなんかよりも大きな大きな想いを。


「先生?」

「なに?」

「オレ、ゆっくりって決めてるんです」

「……そう」


 先生の言う通り、まだまだ子どもだなって思う。欲望が溢れてる辺りは特に。でも……そういうこと、なのかも知れない。


「どうしたいのか。きっと、まだ照れ臭いのがあるからすぐどうこうはできないけど……」


 それが、少しずつ言い合えるようになれば。オレもあおいも、少しずつ寄り添い合えるようになれると思う。


「だから、ゆっくりいきます。そうした分だけ大人になるなら、関係を築いていけるなら。……これからはたくさんありますから、しっかり時間を使って大切にしたい」


 あいつの心も体も。……ずっとずっと。大切にしていきたいから。


「さっきも言ったけど、あなたひとりじゃダメよ。……大切にしてあげなさい。そして、大切にしてもらいなさい?」

「……はい」


 つらい苦しい悲しい寂しい思いは、もう絶対にさせない。困らせるようなことも、泣かせるようなことも。……絶対したくない。


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