すべての花へそして君へ①

謝罪をしに行ったら笑われた


 そんな風に悩んでいたにもかかわらず、あおいから欲求不満だったということを聞かされて、悩んでたのも忘れて素直にちゃっちゃと言ってしまうのは、まだもう少し後の話……。
 先生と別れたオレは、謝罪相手を捜しに会場に足を運んでいた。


(……こう、都合がいいのか悪いのか)


 謝りたい相手が、固まっていた。トーマ、アキくん、アカネ。一遍に済むのはいいけど、正直みんなまとめての方が今回はダメージがキツいなって思った。


「……お。ピッチングコーチ。どうだ? 調子の方は」


 まあ、行くけどさ。


「……葵は?」

「会ってないからなんとも。今は……五番バッター捜しに行った」

「え」

「五番?」

「ひなクン、しっかりっ」


 いや、まだ可能性はゼロじゃない。まだオレは諦めてない。五番バッターは、あいつにはまだバレてないっ。大丈夫だっ。


「……ちょっと、さ。アカネも。その、バッター選出のことについて言っておきたいことが、あって……」

「「「……??」」」


 ――――――…………
 ――――……


「わははははー!!!!」


 バカ笑いしながら、トーマには指差されるし。


「気にしてないよ。日向は偉いな」


 アキくんには頭撫でられるし。


「もおー! ひなクン!」


 なんでか知らないけど、足りなかったのかアカネにはまたポカポカ殴られるし。


「……まあ、言わないままは嫌だからね」

「ったく。お前も面倒な性格してんな。知ってるけど」

「それが日向のいいところだ。……そのままにしておけなかったんだもんな」

「だから、そう思うのは普通のことだってばっ。おれらはあおいチャンもひなクンも大好きなんだからっ!」


 そんなやさしいみんなに、小さく笑いが漏れる。


「みんなバカだね」


 そう言っても、怒ってこないくらいやっぱりみんなやさしくて。
 バカだなって思って。ありがとうって。何回も言わせてもらった。まあそれをユズにバッチリ見られてるとは思ってなかったけど。
 カナのフォローを、きっとユズならしてくれると。率先してやりたいと。そう言ってくれるだろうから、残ってもらうようにお願いして。オレはそのあと、三番と五番に謝罪をしに、泣き過ぎで寝込んだ奴の部屋へ行った。


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