すべての花へそして君へ①

「ねえ。なんて言ってたの。教えて」

「あはははー!!!!」

「もういい加減にやめてよ。わかったから」


 そしてここでも散々。本当に散々笑われたあと、もう完全に開き直ることにしたオレは、アイに例の写真について問い質そうとしていた。


「あははっ。あーごめんごめん。いやあ、俺そこまで考えてなかったのに、わざわざそんなこと言いに来る辺り、九条くんらしいなと思ってー」

「うるさいっ」

「まあ、それはさておき。そういうのを聞くの野暮でしょ? 俺はあおいさんの味方だからね~」

「あ。恩人に対してそんなこと言うんだ」

「え? 俺らは君の恩人だと思うけど?」

(……何も言えない……)


 完全に今はアイたちの方が上手だ。前までは立場的にオレの方が上だったのにっ。今じゃそれが逆転している。そんな俯いているオレを、物珍しそうな顔でカオルはつんつんと突いてくるし。


「……だって知りたいじゃん。嫌なんだって。オレの知らないところであんな顔して欲しくない」

「ヤキモチか」

「そうだよ」

「素直か」

「そうだよっ!」

「うわ……」

「え。レン、それはちょっと傷付くよ普通に。引かないでよ……」


 でも、結局のところ教えてくれなかった。


「九条さ~ん。そういうのは、ご本人さんに直接聞いてみればいいと思いますよお?」

「……わかってるし」

「わかっているのに聞いてくる理由とはあ?」

「……こんなことで妬いてるとか。小っさい男だって、知られたくない」

「……? もうご存じなのでは?」

「え」

「小さいはともかくう、あなたが彼女をこの上なく好いておられることは、十分ご存じですよお? それは、向こうも一緒ですう」

「……。わかってる、し」


 まあ、聞かなくてもなんとなく想像は付くし。あいつ普通にそういうこと面と向かって言ってくるし。……オレにそんな素直さはないけど。『オレも一緒』でずっと通すわけじゃないけど……言えるかな、オレ。
 はあと大きなため息をついて、重い腰を上げた時だった。


「……」

「……? 九条。どうしたんだ」


 着信が来た。相手は……さっき『また』お願いをした相手。


「ちょっと電話出てもいい?」

「あ? ああ。それは構わないが……」


 一応部屋の主に断りを入れて、部屋の隅で電話を取った。


『取り敢えず。泣いてるからハンカチ渡しに行ってきまあす』

「……そっか。頼むね」


 相手はアカネ。実はさっき会った時、アカネにはもう一つお願いをしていたんだ。


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