すべての花へそして君へ①
 ――――――…………
 ――――……


『……え? おうり?』

『うん。バッターは五番までだからさ。オウリのこと、頼んでもいい?』

『……そこまでひなクンが気にすることないと思うよ、ほんと』

『そうだろうけど。……でも言ったじゃん。みんなで幸せになろうって』

『ひなクン……』

『オウリの場合、多分だけどアカネには吐いてくれるんじゃないかなって』

『ひなクンでも、ちゃんとおうりは吐いてくれると思うよ?』

『……言いたくないことまでは、きっと吐いてくれないから』

『……。でもさ、ひなクン聞きたいよね?』

『え』

『ううん。聞いてあげるべきだと思う。おうりには悪いけど、言いたくないこともちゃんとひなクンに聞いてもらうべきだ』

『……アカネ』

『話せるようになったんだ。ちゃんと、そういう気持ちもぶつかっていかないとね』

『……オウリが大好きなんだね』

『ひなクンもでしょ?』

『もちろん。オレは、オレでいさせてくれるみんなが大切だから』

『ははっ。そっか~。それはよかった』


 それから、アカネがスピーカーにしてくれていたお蔭で、オウリの陰口がバッチリ聞こえた。……ちゃんと聞けてよかった。オレに吐いてくれて、よかった。

 ただまあ――


『だから今からちゅーしてくる!』


 って言われた時は、一瞬反応に遅れたけど。


「はああ!? ふざけんな!! 誰のもんに手出そうとして――」

『それじゃあね~』

「っ、ちょ、オウリっ!」


 あいつは、あおいの唇をオレらの目の前で奪ったという前科がある。――あいつならやる。絶対やるっ。


 ……。……。……。


「はあ~い。こちら、九条さんのスマホですう」

『あれ? かおる? ひなクンは?』

「よくはわかりませんが、鬼気迫る勢いで何かを狩りに行きそうな雰囲気でしたので、今アイさんが――」

「離せっ!! 早く行かないと!! オレだって今お預け食らってるのにっ!!」

「ちょっと九条くん落ち着いて」

「取り敢えず取り押さえてくれてますう。レンくんは初めに九条さんにぶっ飛ばされて床の上で死んでますけどお」

『う、うん。なんとなく状況がわかったよ。取り敢えずひなクンが恐れている状況にはならないと思うから、彼に替わってもらえると嬉しいな』

「はあ~い。了解ですう」


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