すべての花へそして君へ①
 ✿


「それで? カオル、どうしたの?」

「コズエさんのところに行かないんですか」


 九条に蹴られて、なんとか復活を遂げたオレと、オレにとっては未知の領域の強さを持つアイさんは、膝を抱えて小さくなっているカオルにそう声をかける。


「……ぼくは、別に。どうもしません」

「ん?」

「いや、明らかに様子がおかしいですよ」

「おかしいのは……。コズエさんの方です」

「(……そりゃ)」

「(そうでしょうね)」

「わかりません。ほんと……。ぼくは。ぼくの都合のいい方にしか……。取れないんです……」

「(でしょうよ)」

「(そうでしょうよ)」


 もっと小さくなってしまったカオルの背中を、そっと支えたアイさんの視線がこちらに飛んでくる。それにオレは、小さく頷いた。


「(ま。大人だからね。ちゃんと言うでしょう)」

「(知らぬは当人ばかりなり、ですね)」


 これは、自分たちのことを話す前に、彼の悩みを聞いてあげないといけないなと。きっと、オレだけではなくアイさんも思っただろう。


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