すべての花へそして君へ①
――そんなの、大歓迎に決まってるじゃん。
再び歩き出しながら、吐息混じりに零れた言葉。それと同時に、少し強く握られた手。
それに、ほんの少しだけ緊張が走った。心なしか、手汗をかき始めたような気さえする。
(うわ……っ、な、なんだ、これ……)
嫌な緊張じゃない。すごい……ドキドキいってる。
(……な、なんだ、これっ……)
今までも、ドキドキすることは何度もあった。なのに。こんなの、比じゃないくらい――
「手汗ヤバ」
あー……ハイ。すみませんね、ヤバくてね。手汗以上に心臓さんがヤバいですけどね。ヤバかったんですけどね。……ちょっと静かになったヨ。アリガトウ。
「ごめん。嫌だったら言って」
「え?」
居心地悪そうに手の平が動く。もちろんしているのはわたしじゃない。
「……ヒナタ、くん?」
こっちは向いてくれなかった。しかも見上げてみると、彼の顔は正面じゃなくてわたしとは逆方向を向いている。
「……嫌なわけ、ない」
「……そ」
たった一音。でも、それだけでものすごくほっとしたのがわかった。
もちろん、音だけじゃない。
「……」
一瞬の安心。ふっと繋がれた手に、余計な力が抜けた気がした。
「……緊張、してる……?」
返事の代わりに、ぎゅっと力が加わる。それでもこっちは向いてくれない。……じゃあ。
「照れたの?」
「え」
今度はそう聞いてみた。意外だったのか驚いたのか。彼は慌ててこちらを振り返る。
「それとも、恥ずかしかった?」
やっとこっち見た。まあなんとなく理由はわかってたけど。
「……別に。恥ずかしくないし。照れてもないし」
「ははっ。嘘ばっかり~」
ちょっとだけ赤い耳。頬。もしかしたら、夕焼けのせいとか理由をつけて逃げられるかと思ったけれど。
「……ただ、嬉しかっただけだし」
結局そう言いながら恥ずかしそうにしてるじゃん。
……て、てっふゅを。てっしゅをくらはい……。
「じょ、序盤で流血沙汰はやめてくれっ……」
「は?」
ダメだ。さっきから心臓さんが痛い。わたしのきゅんきゅんメーターが暴走寸前だ。