サヨナラじゃない

「アラレ！早く行こ！！」
「わかりましたよ、千影様。」
呆れたような、面白がっているような、
そんな顔で笑いながら、アラレは呪文まがいの言葉を発した。多分、向こうの新居に行くための詠唱かなんかだろう。
「あ、それと、様付けとか敬語とか一切禁止ね」
「なぜ」
「私が嫌だから！」
「…はぁ、わかったよ。どうせ100日間生活を共にすんだ」
いししっと私はまた笑う。
その時私たちはいつかの人工の光じゃなくて、
優しさを帯びた光に包まれて、一瞬にして消え去った。
あの不思議な深淵とは、おさらばである。