サヨナラじゃない
「…雨坂、ちゃん…?」
彼女はハッとする。
小っ恥ずかしそうに目尻を下げる彼女には、さっきの面影なんて微塵も感じられない。
「ご、ご迷惑をおかけしました、です…」
「えへへ」と、雨坂ちゃんは笑ってみせる。
「す、凄いよ、雨坂さん…!」
アラレは驚いて、「かっこいい!」と、感無量という感じだ。
「そ、そんな、照れるのです…」
またふわりと彼女は笑う。
「…ちーちゃん?」
「千影ちゃん?」
同時に2人に声をかけられた。
…あぁ、泣きそうだ。
そう思うと、ぼろぼろと涙が溢れる。
「ち、ちーちゃっ…!?」
あわあわと慌てる様子も可愛らしいのは、なんなんだよ。
ほんと、
「ひっぐ、…優しい人も、ひぐっ、いるんだ、ね…」
好きな場所を守るために行動する彼女は、強いし優しいと思う。会ったことなかった、こんな子に。
あはは、と私は笑う。
多分察したんだろうアラレは、何も言わない。
「世の中には勿論、悪い人もいますけど、、、少なくとも僕の周りは、優しい人ばっかです」
笑う彼女が、1番輝いて見えた。
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