サヨナラじゃない

〚自由に〛

ゴクリ…
学校を前にして喉がなった。
そう、今日から学校が始まるのだ。
「…怖い」
学校なんて、行きたくないんだよね。
でも中学生でしょ？義務教育って難しいもののために、行かなければならない。……つまり、私の気分は今サイアクだ。
「ほら、千影。行くぞ」
手を出され、その手を取らないわけには行かなくなった。
「い、行きたくない…」
高校での私の環境を知っているアラレ。
本音をいうなら、学校に行かなくていいと言って欲しい。
が、あの仕来りに忠実なアラレのことだ。
私を行かせるに決まっている。
「…学校行かなくてもいいぞ」
「だよね、行かせるよねって…え？」
驚いた。
これは予想外である。
「……なーんてな。ほら、学校行くぞ」
…やっぱり、アラレはアラレだ。
学校に行かせる。
「でも。」
何かをアラレは伝えようとした。
「でも？」
私は聞き返す。
「あいつら、いい奴らだし安心しろ」
アラレが他人を認めるなんて…。
あらやだ。この子、どんどん成長していくじゃない。
「それに、雨坂さんもいるから。いこ？千影"ちゃん"」
雨坂ちゃん…！
そっかぁ、学校ってことは雨坂ちゃんもいるんだね！
味方がいる学校…うん、怖くないかも知れない。
「わかった！いく！！」
「いや寝返るのはやっ！」
アラレのツッコミに対抗して私もいう。
「だったらアラレもだよ！私にちゃん付けなんてキモい」
ガーンッ！
そんな音が聞こえた気がした。
「そ、そんなぁ…。千影さんやぁ…」
「じいちゃんかよ！」
なんでもないやり取り。
あぁ、私が憧れていたやつだ。
…やっと、自由になれたのかな？
これからの学校に、少し期待して、胸を躍らせた。