すべての花へそして君へ②
「只今ツンツン不足警報発令中なのであります!!」
「うっさ……」
決して全てが全て嘘というわけじゃない。本当に、ツンのヒナタくんが恋しくなってることもまた事実なのである。
だからこれは、嘘じゃない。隠した……わけじゃない。
「デレ甘も捨てがたいけど、わたしはツンも好きなの!」
「要求が多いですねー」
「だってだってだって! はじめはもうツンツンツンツクツンぐらいの重傷さだったけど」
「つ、ツンツク……」
「最近は別の意味で刺激が強かったけど、前までの刺激も恋しいのです!」
「前……って言ったって」
えぇえぇ、それはもう本当に素直じゃないあなたでしたけどね? けどそれはそれでわたしは愛おしかったりするのです。それはもう、こう……ぎゅーっと抱きしめたくなるような感じで!
「プリーズツンツン!」
「いや、でも……」
「ワタシは~ツンを~モトメマ~ス」
「だいぶふざけすぎ」
「イエス! ユーキャン!」
「はいはい」
けどやっぱり、そんな必死の懇願もさらりと躱して。「それでも」と、彼はやさしくわたしの手を取る。
「今は、言わせて――……」
たくさんたくさん「好きだよ」と、溢れんばかりの愛と一緒に。……けど。
「……あおい?」
「わたしも、好き。ヒナタくんが好き」
「……ん。オレもだよ」
小さく……そして深い場所で起こる胸騒ぎに。このときのわたしは、その手を強く握り返すことしかできなかったのだった。
――――――…………
――――……
ガタンガタンと揺れる電車とバスの中。窓の外を流れる景色は、月日が流れるとともに少し変わったところもあるけれど、記憶の中のそれとほぼ同じだった。
父から、母から、この場所のことを聞いたのだろうか。ううん。きっと彼なら、聞かなくてもわかってしまうだろう。
「わあー……」
そこは、視界いっぱいに広がる向日葵畑。段々と奥の方まで続く緑と黄色と、真っ青な空とのコントラストが、言葉には表せられないくらい見事で。すーっと吸い込めば、花と夏のにおいが、体中に満たされる。
「正解?」
「だいせいかいっ!!」
ほら。やっぱり誰にも聞かなかったんだ。
きっとあの写真だけ。父からもらったそれだけで、彼は再びわたしをここへ、連れてきてくれたのだろう。
「違うよ」
「え?」
繋いだ手をくいっと引っ張る彼を見上げると、もう一度「違うよ」と。それだけ言って、ただやさしく口元に弧を描く。
「……違う?」
「うん」
何を『違う』と言っているのか。
首を傾げるわたしにふっと笑って、彼は一通の手紙を、そっとこちらへと差し出してくれた。