すべての花へそして君へ②

「只今ツンツン不足警報発令中なのであります!!」

「うっさ……」


 決して全てが全て嘘というわけじゃない。本当に、ツンのヒナタくんが恋しくなってることもまた事実なのである。
 だからこれは、嘘じゃない。隠した……わけじゃない。


「デレ甘も捨てがたいけど、わたしはツンも好きなの!」

「要求が多いですねー」

「だってだってだって! はじめはもうツンツンツンツクツンぐらいの重傷さだったけど」

「つ、ツンツク……」

「最近は別の意味で刺激が強かったけど、前までの刺激も恋しいのです!」

「前……って言ったって」


 えぇえぇ、それはもう本当に素直じゃないあなたでしたけどね? けどそれはそれでわたしは愛おしかったりするのです。それはもう、こう……ぎゅーっと抱きしめたくなるような感じで!


「プリーズツンツン!」

「いや、でも……」

「ワタシは~ツンを~モトメマ~ス」

「だいぶふざけすぎ」

「イエス! ユーキャン!」

「はいはい」


 けどやっぱり、そんな必死の懇願もさらりと躱して。「それでも」と、彼はやさしくわたしの手を取る。


「今は、言わせて――……」


 たくさんたくさん「好きだよ」と、溢れんばかりの愛と一緒に。……けど。


「……あおい?」

「わたしも、好き。ヒナタくんが好き」

「……ん。オレもだよ」


 小さく……そして深い場所で起こる胸騒ぎに。このときのわたしは、その手を強く握り返すことしかできなかったのだった。


 ――――――…………
 ――――……


 ガタンガタンと揺れる電車とバスの中。窓の外を流れる景色は、月日が流れるとともに少し変わったところもあるけれど、記憶の中のそれとほぼ同じだった。
 父から、母から、この場所のことを聞いたのだろうか。ううん。きっと彼なら、聞かなくてもわかってしまうだろう。


「わあー……」


 そこは、視界いっぱいに広がる向日葵畑。段々と奥の方まで続く緑と黄色と、真っ青な空とのコントラストが、言葉には表せられないくらい見事で。すーっと吸い込めば、花と夏のにおいが、体中に満たされる。


「正解?」

「だいせいかいっ!!」


 ほら。やっぱり誰にも聞かなかったんだ。
 きっとあの写真だけ。父からもらったそれだけで、彼は再びわたしをここへ、連れてきてくれたのだろう。


「違うよ」

「え?」


 繋いだ手をくいっと引っ張る彼を見上げると、もう一度「違うよ」と。それだけ言って、ただやさしく口元に弧を描く。


「……違う?」

「うん」


 何を『違う』と言っているのか。
 首を傾げるわたしにふっと笑って、彼は一通の手紙を、そっとこちらへと差し出してくれた。


< 265 / 519 >

この作品をシェア

pagetop