すべての花へそして君へ②

『……カナ、元気にしてた?』

『……はいっ。それはもう、とっても!』


 ハンドルに手をつき、俯いた彼女の横顔は、完全に母であり、そして妻だった。


『シオンもマサキくんも、元気そうで、何よりだったわ』

『……サラさん』


 車を走らせながら、彼女は組を出てからのことを話してくれた。


『あたしはあたしなりに、あの組を守ろうとしてたの。アオイちゃんが気に病む必要は、どこにもないんだからね?』

『はい。ありがとうございます』


 ――あの頃はあたし、結構おっとり系だったけど、それは守られていたからだってわかったの。強くならなきゃって、そう思ったのよ。
 でも極道にいた身だし、調べるって言っても、守るって言っても、どうやればいいかあたしわかんなくてさ。アホだから。


『それで猛勉強して、大嘘こいて警察入って。いろいろやってたら今のところに引っ張られてー』

『は、はあ……』

『……意気込みをね、買ってくれたの』

『……サラさん』

『もうね、嘘ついてたのバレバレだったみたい』


 そして、【もう組に戻らない】ことを条件に、あたしはこの仕事に就いた。


『……え』

『あなたのところへは行けなかったけれど、それまでにシオンとマサキくんには会って話をしたわ。もちろんカナも』


 そ、んな。じゃ、じゃあサラさんは……。それにシオンさんもマサキくんもカナデくんも、それに納得して……?


『アオイちゃんは、いつも一緒にいることが一番の幸せだと思う?』

『え……?』

『人それぞれだと思うわ。だから、それにアオイちゃんが頷いたって、あたしは別に文句を言うつもりはない』

『わたし、は……』


 幸せの定義なんて人それぞれだ。……人の数分だけ、それはある。
 わたしにとっての幸せは、みんなが幸せになることだ。それはもちろん、彼も思ってくれている。それに、一番は彼を幸せにしてあげたい。彼が隣で笑ってくれていたら幸せだ。それはもう、最上級に――――。


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