すべての花へそして君へ②

 ドクンッ。


(……あ、れ……)

『ちょっと意地悪なこと言っちゃったかな?』

『え? い、いえ……』

『まあ、あたしの場合だけれど、別に組に戻れないからって、もう会えないからって、不幸とは思わないわ?』

『あ、会えないんですか?』

『シオンが悪いことしたら会えるかもねー?』

『そ、それは。複雑……』

『ははっ。……でも、あの時きちんと会って話せたし、二人もカナも納得してくれた。あたしの気持ち、ちゃんとわかってくれたの』

『サラさんの、気持ち……』

『うん。……アオイちゃん、あのね?』


 ――男ってね? 強くもあるけれど、弱い生き物なの。そして女は、弱くもあるけれど、強い生き物なの。


『この意味、わかる?』

『……はい。わかります』

『……そっか。なら、あたしからはもう言うことはないかな?』

『でも、やっぱりどっちも強いと思いますよ』

『え?』


 会えなくて、寂しくても。サラさんの思いを決断を、皆さんはただ、受け止めてくれたんですよね?


『アオイ、ちゃん……』

『だからね? サラさん。わたし時々五十嵐さん家にお邪魔して、バタバッタとなぎ倒したいと思いますっ!』

『え?』

『皆さんがどんな様子だったか。……わたしでよければ、そんなにしょっちゅうは行けないかも知れないですけど、お話ししますね?』

『あおいちゃん……』

『その時は必ず写真を撮ってきましょうっ。それから今日は、サラさんのお写真を撮っておきましょう!』

『……うん。ありがと』


 ――――ほんと。あなたの言葉には、多くの人が救われたのね。

 その言葉には、素直に頷くことはできなくて。ただ、精一杯。苦笑いで返しておいた。


『サラさん? やっぱりわたしの幸せは、好きな人のそばにいることだと思うんです』

『……じゃあ、離れてしまったら?』

『それでも幸せですよ?』

『え?』

『だって、想いが離れているわけではないのでしょう? サラさんみたいに』


 会えないのはつらい。会いたいなって思う。けれど、サラさんは会いに行った時、ちゃんと想いを確かめたんでしょう?


『好きってすごいですよね。愛はもっとすごいです。そんな絆を、わたしも大きく育てたいなって思います』

『……。そう。それを聞いて安心したわ』

『大丈夫ですよ! わたしも、サラさんに負けたりしませんからっ』


 自分の幸せは、自分で掴まないと。やっぱり隣には、ずっと、彼にいてもらいたいんだから。


『そうそう、望月モミジさんのことなんだけど』


 そこでも詳しく聞いたけれど、やっぱりまだ彼女は見つかっていないみたいだった。


『その時の関係者に洗い浚い聞いたけれど、捜査が難航しててね。ほんと、猫の手も借りたいくらいで』

『じゃあ貸しましょうか?』

『え?』

『いや。寧ろ、こんな手でよければ使っていただきたいんですにゃ~』


 そんなこんなで。結局家まで送ってもらったわたしは、“猫の手”を貸すことを、申し出たのだった。


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