すべての花へそして君へ②
話題の豪華客船というのは、ある有名な実業家の持ち物。今度、その社長の御曹司のお誕生日パーティーをそこでするらしく、今やニュースや新聞はその話題で持ちきり。なんでも、数週間かけていろんな国に停泊するんだとか。んでもって、超有名人や政治家、資産家、芸能人なんかが呼ばれてるんだとか。……って、今この話題全然関係ないからっ。
「まあ、大きさなんて人によってまちまちよ? あたしはこのフネ、小っさいと思うもの」
……なんとなくだけど、わざと彼女はあんなこと言ったのかな。
“大きい”と思って実物のものを見たのなら、きっと今のように拍子抜けまではしなかっただろう。“小さい”と言ってもらっていたからこそ、その覚悟で実物を見た今、わたしの体からは無駄な力が抜けているんだ。……わたしのまわりは、本当に素敵な人たちでいっぱいだっ。
「さて。いいかい? 諸君。お遊びではないからね? しっかり協力してもらいます。……大体の場所は見当ついてるの。だから今からそこへ行くわ」
「みんなには、何か海に浮かんでいるようなものとか、手掛かりになりそうなものを、見つけて欲しいの」と、サラさんは言うけれど、わたしたちが見つけられるものは、きっとほぼないに等しいだろう。もう、海に浮かんでいるようなものは流されているだろうから。
でも、それでも何かの拍子に見つからないとも限らない。見つからなければまた来ればいいのだ。ついでに。
「ライフジャケット、ちゃんと着たわね? ……それじゃあ、行きましょう」
昔乗っていたものとは程遠い、わたしたちを乗せたふねは、大海原へと出航したのだった。