すべての花へそして君へ②

「アイさ~ん。頑張ってくださ~い。勝利は目に見えてますよおー」

「うーん。そーだねー」

「カオル! ちょっと黙っててください!! アイさんも! やる気ないなら引き下がってくださいよ!」


 ……ヒナタくん。ダメだよ。こんな勝負、やる前から結果は見えてるじゃないか。


「いやー、バカだねあいつ。昔からの恋敵だからってアイと戦うなんて。なんだかかわいそうになってきたよ。どんな風にやられると思う? オレ、屋根突き破ってぶっ飛んでいくと思う」

「それに追加で“くるくる回りながら”を付けてください」

「あ。いいね、それ。面白そう。それ撮りたいからアイ。頑張ってね」

「そっちも!! 余計なこと言わないでください!!」


 どうやら彼は本気のようで。今から、レンくんvsアイくんの戦いが繰り広げられるようだ。……うん。救急箱を準備しておこう。


(あれ。……アイ、くん?)


 そう思って腰を上げようとしたのだけれど、なんだか少し、彼の様子がおかしい。心ここに有らず。なんだか悩ましい表情で、全然集中できてないみたい。


「わっ!!」

「……!? うわっ!?」


 そんな、ぼーっとしてるから、近づいてきていたレンくんにも気付かなかったみたいで。いきなり大きな声を間近で出されて驚いたアイくんは、本気でビックリして尻餅をついた。


「やった! やりましたよ!! あおいさん見ていてくれました!? オレが……っ。オレがっ! アイさんをやっつけましたー! 撮ったか九条!! 証拠はお前が撮ってくれ――」

「あ。ごめん。撮影ボタン押すの忘れてた」

「くじょおおおー!!!!」


 そんな落ちだろうと思ったよ。
 ――勝者、証拠は残ってないらしいけど、一応レンくん。


「……うわ。変なの撮っちゃったじゃん。しっかりしてよねアイ」


 つ、続いての対決は……。


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